【読書感想】推し、燃ゆ

宇佐美りんさん著の第164回(2020年下半期)芥川賞受賞作にして2021年本屋大賞ノミネート作品です。直木賞受賞作やノミネート作品が本屋大賞にノミネートされることは珍しくありませんが、芥川賞受賞作がノミネートされるのは珍しいのではないでしょうか。

内容

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。

推し、燃ゆ :宇佐見 りん|河出書房新社

読書感想

本屋大賞にもノミネートされているということは、やはり女性ウケが良い作品なんだと思いますが、おそらくこの作品は私と同じようなオジサンが読んでもあまり刺さらないでしょうね。ただ、「私と同じようなオジサン」=「私世代のおじさん」ということではなくて、私のようにこれまで特にアイドルとかスターに嵌ったことも熱狂したこともなく、身近にそういう人がいても呆れて傍観していた人種という意味です。

作者の宇佐美りんさんは現役の女子大生ということで、わりと等身大の自分を表現していると思います。実際に芥川賞受賞のインタビューで、長年推し続けている人がいると言ってますので、確かにその心境は誰よりもよくわかっているのでしょう。

反対に私にはそういう経験がまったくなく、理解も共感も出来ないので、物凄く面白かったとか身につまされたとかもまるで無いのです。推しが生活の一部であり、背骨でありというほどのめり込んだ芸能人がいないというと確かにそうなんですが、クラスメートの誰かに恋したりとか、そういうのとはまた別なのでしょうか。もし同じものだとしても、そこまでの恋心を抱いたことがないので、結論としては大差ないわけですが。

文体は非常にわかりやすくリズミカルで、読んでいて苦になりません。辞書を引かなければわからないような難語も出てきませんから、中高生でも難なく読めるでしょう。テンポ良く読めると言えばいいでしょうか。文学作品にありがちな性的な描写も無いので、小学生にでも安心して読ませられるでしょう。いわゆるネット用語も、普段からパソコンやスマホを弄っている人からすれば、特に難解なものやマニアックなものもありません。

ありませんが。。。今は芥川賞でもこういう時代なんですね。一歩間違えたらただのライトノベルになりそうな感じなのは、おじさんとしてはちょっと寂しい気がします。と言ってもライトノベルをまともに読んだこともないんですが。

主人公の推しに対する熱量は、私が今まで読んだ芥川賞の作品では、「むらさきのスカートの女」とか「コンビニ人間」の主人公の、それぞれ「むらさきのスカートの女」や「コンビニ」に対する執着心に似たものがあるように思うのですが、読んだ後の爽快感というか、読後感の良さをあまり感じません。ひとつには主人公が発達障害で勉強についていけなかったりとか、身の回りのものを片付けられなかったりとか、色々問題に直面しながら葛藤しているというのがあるからなんでしょう。

いずれにしろ、これは読んだ人のこれまでの人生観とか性格とかが反映される作品になっているように思います。私よりも上の年代の方が読んだとしても、きっと「きよ友」さんとかなら気持ちがわかるんでしょうね。

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