【読書感想】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

第20回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作、タイトル通り密室殺人事件をテーマにした鴨崎暖炉さん著作の推理小説です。文庫グランプリはそれまでの優秀賞を第19回から名称変更したものです。著者の鴨崎暖炉さんは1985年山口県生まれ、東京理科大学理工学部卒業後、現在はシステム開発会社に勤務しているそうです。

あらすじ

「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された⽇本では、密室殺⼈事件が激増していた。そんななか、著名なミステリー作家が遺したホテル「雪⽩館」で密室殺⼈が起きた。館に通じる唯⼀の橋は落とされ、孤⽴した状況で繰り返される凶行の現場はいずれも密室、死体のかたわらには奇妙なトランプが残されていて――。

ー密室⻩⾦時代の殺⼈ 雪の館と六つのトリック|文庫グランプリ|宝島社ー

読書感想

上のあらすじにあるように、密室の不解証明(密室の謎が解けない場合)はアリバイと同等の価値がある(アリバイの存在と同様に無罪認定される)という架空の判例を基にした、架空世界での物語です。ですので、人間ドラマとかトリックの実現性などは二の次で、密室トリックに特化した小説とも言えると思います。クローズドサークルにおける連続殺人事件で、その全てが密室で行われるので、密室トリック物が好きな方にはとても満足感に浸れる作品ではないかと思います。

登場人物もわかりやすいように職業と名前をリンクさせたり、ところどころ作者のユーモアを感じさせる記述が出てきますので、殺人事件でありながら軽妙で、とても読みやすいものになっています。とにかく密室殺人に焦点を当てていますので、殺人における残された人たちの恐怖や緊迫感とか、細かいディテールなどは放棄されている感は否めませんが、密室がいくつも出てきますので、それだけ純粋に密室殺人事件を推理することが出来ます。

実際のトリックは、これだけの大仕掛を他の誰にも気づかれずにやるのは不可能だろうとか、後から警察が調べたらすぐにわかるだろうと思うところは多々ありますが、まあそんな細かいところは置いといて密室トリックの謎を愉しむのが本書の正しい読み方なのでしょう。

あまり中身に突っ込んでしまうとネタバレになってしまいますので、気楽に推理小説でも読みたいなという時のお供に良いのではないかと思います。

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