【読書感想】おいしいごはんが食べられますように

第167回(2022年上半期)芥川賞を受賞した高瀬隼子さん著の小説です。著者の高瀬隼子さんは1988年愛媛県生まれ。2019年に「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞して、文壇デビューしました。

あらすじ

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

ー『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬 隼子)|講談社BOOK倶楽部ー

読書感想

タイトルから連想したのは、食に対するこだわりが強い主人公が、なんらかの状況を克服して美味しい食事が出来ることを願うグルメ関係の内容のように思いましたが、実際に出てくる主人公はむしろ食に対するこだわりはまったくといいほど無く、カップラーメンを食べていれば満足できるような平凡な人間です。カップラーメンを食べられれば十分という点では、私自身も似たようなところがあるので非常に共感できました。

内容的には、職場での三角関係ややっかみや嫌悪感などのささいな人間関係を描いた内容になっています。これも難しい表現などは殆どなく、正直最初はライトノベルを読んでいるかの錯覚にもおちいりましたが、これもまた時代の流れなのかとも思います。

私のようなある程度年を取っている者からすると、女性の名前は姓よりも名前で表現することが多いと思うんですが、この小説ではすべて苗字呼びになっているので、名前からその人となりを思い出すのに少し苦労しました。おそらくそうした男女平等的なことも、昨今の学校教育やコンプライアンスから来ているのだろうと思いますが、別の意味で差別的なエピソードもまた、本書の内容の面白いところとなっていて、不公平感や不満などは共感する女性も多いのではないかと思いました。

少し面白いと思ったのは、先程のあらすじで登場人物が3人いますが、書かれている視点が二谷の場合からと、押尾の場合からのふたつあること。もちろん登場人物は他にもいるので、少し混乱する要因にもなっていますが、男女の考え方の違いということではいいのではないかと思います。

先程も言いましたが、とても読みやすい内容になっていますので、これも芥川賞に気軽に触れたいと思っている方にはおすすめできる一冊です。

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