ノンフィクション作家佐々涼子さん著作の、2020年「Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞」受賞作品です。エンド・オブ・ライフという英語のカタカナ表記で、直訳すれば「人生の終わり」ですが、本書は人の終末医療、その中でも特に在宅によって最後を迎える人達や家族、医療関係者の看取りの物語です。
あらすじ
200名の患者を看取ってきた看護師の友人が癌に罹患。「看取りのプロフェッショナル」である友人の死への向き合い方は、意外なものだった。最期の日々を共に過ごすことで見えてきた「理想の死の迎え方」とは。
著者が在宅医療の取材に取り組むきっかけとなった自身の母の病気と、献身的に看病する父の話を交え、7年間にわたる在宅での終末医療の現場を活写する。読むものに、自身や家族の終末期のあり方を考えさせてくれるノンフィクション。
感想
この話の主人公は、在宅で終末医療を行う京都の渡辺西賀茂診療所で訪問看護師をしていた森山文則さんという方です。本当は、その方が自分が癌に罹患したことを知った時に、友人でノンフィクションライターの著者に共同執筆の話を持ちかけたのが事のきっかけのようですが、おそらくはそれがなかったとしても上梓されていたことでしょう。
人が生まれた以上は避けては通れない「死」がテーマですから、身につまされるところは多くあります。死に対する考え方、受け止め方は人それぞれでしょうし、これまで経験してきた人生や出会いによっても捉え方は違ってくるでしょう。
最初のエピソードを読んだ時に、いくら看取り専門の診療所とは言え、実際にここまでやるのかとその献身ぶりに驚嘆したのと同時に、こういう医療関係者に囲まれて逝けたのであれば、きっと幸せな最期だったのだろうなと想像できて羨ましくもあり、その反面、この世の多くの人の最期は病院で追い出されるように迎え、私自身もそれを目の当たりにしてきていることを思うと、なんとも複雑な気持ちになりました。
主人公が看護師として献身的に仕事に励んでこられたこと、そして癌患者として迎える最期。途中で語られる多くのエピソード、看取りの立場から看取られる立場への変化で揺れる気持ち。そのひとつひとつがかけがえのない素敵な物語で、あらためて人はなぜ生まれてどこに向かうのか。誰も正解を持っていない中で、自分はどう受け止め、行動するのか。色んなことを考えさせられる良書でした。
コメント