【読書感想】赤と青とエスキース

2022年本屋大賞第2位に選出された、青山美智子さんの著作です。著者の青山美智子さんは、昨年度も『お探し物は図書室まで』で、本屋大賞2位に選ばれています。今回雪辱はなりませんでしたが、それでも日本中の作品が対象となり、数多くの名作が鎬を削る本屋大賞において、2年連続で本屋大賞の2位を獲得出来たというのは、凄いことではないでしょうか。

あらすじ

 1枚の「絵画(エスキース)」をめぐる、5つの「愛」の物語。彼らの想いが繋がる時、奇跡のような真実が現れる――。著者新境地の傑作連作短編集。

ー 赤と青とエスキース | 青山美智子著 | 書籍 | PHP研究所 ー

読書感想

上にリンクした公式ページに、解説が書かれているのですが、おそらくそれを読まずに、というか、余計な先入観を持たずに読んだほうがきっと面白いと思います。2度読み必至とありますが、それは読んでみればおわかりになるだろうと思います。2度読む羽目になるのは面倒くさいという方は、最初から注意深く読んでください。

タイトルに使われている『エスキース』というのは、私も初めて聞きましたが、デッサンの下絵のことです。作品中にも触れられていますが、赤と青の2色で描かれた、そのエスキースにまつわる短編集になっています。

あまり言うとそれ自体がネタバレになってしまうのであえて言及しませんが、女性ならではの視点で恋愛部分は非常に甘く、逆に人の業についてはとてもうまく表現されているのではないかと思います。

最初はライトノベルを彷彿とさせる、女性うけを狙った短編集なのかなとも思ったのですが、どうしてどうして、短編としてもその一話一話がとても面白く、さらに全体としてもまとまりを持っているという点で、この作品は非常に完成度が高いと感じました。

その辺は、前年度本屋大賞2位の『お探し物は図書室まで』と通じるものがあるかと思いますが、そのしっかりとした構成力はすでに昨年度培われていたのでしょう。連作短編という部分は共通していますが、今年はさらにパワーアップした印象を受けます。

内容的には特に難しい記述があるわけではありません。むしろ著者が作り出す柔和で優しい世界観が心地よく感じることと思います。

一点だけ気になったのは、エピローグはある人が問わず語りに話す内容なのですが、一人称が「わたし」で統一されています。ただ、読んでいる途中に一箇所だけ、それが「私」になってしまっているところがあり、そのことが最後まで気になってしまいました。おそらく誤記なのだろうと思いますが、私の読んだのが初版本なので、重版のときには直されていると良いなと思いました。

もしも、そうではなく、あれはわざとそうしたのだとか、意味があるのだということであれば、どなたかコメントで教えていただけると幸いです。

それはともかく、読後感も素晴らしく、本屋大賞2位に選ばれたのもうなずける良作でした。多くの方にオススメしたい一冊です。

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