【映画レビュー】フォレスト・ガンプ ― 一期一会 ―

1994年にアメリカで公開されたロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の映画です。日本では1995年に公開されました。

内容紹介

“人生は食べてみなければわからない、チョコレートの箱と同じ”―――アメリカの激動する歴史を駆け抜けた、トム・ハンクス演じる青年フォレストの青春を暖かい感動で描いて、アカデミー賞(R)作品賞ほか6部門を独占した映画史に残る名作。

映画レビュー

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督と、名優トム・ハンクスのコンビですから、面白くないはずがありません。アカデミー賞6部門を受賞していますが、同年のアカデミー賞では、他にヤン・デ・ボン監督でキアヌ・リーブス主演の『スピード』や、フランク・ダラボン監督、ティム・ロビンス主演の『ショーシャンクの空に』などがありましたから、その中で6部門受賞というのは、相当優秀です。もっとも、『ショーシャンクの空に』は作品自体の出来は良かったと思いますが、興行的には失敗したと言っていいでしょう。

映画レビューも今さら感がありますが、多くの人が見ているであろう名作ですから、これをお読みになっている方もおそらくすでに観賞されていることと思います。内容に関しては、Wikipediaを見ると、あらすじというよりは全篇の詳細な内容が載っています。その分気楽に書けるということでご容赦願いたいと思います。

普通の人よりも知能指数の低い主人公が、母親の大きな愛と信念や周りの人達の応援と、普通の人よりも優る運動能力で、激動する時代を駆け抜けていく物語です。冒頭から印象的なのは、少し知能の弱い主人公フォレスト・ガンプが、バスを待つ間ベンチに腰掛け、その隣に腰掛けた他の待ち客たちに、自分の身の上話を問わず語りに話す場面です。

主人公には野心はなく、その時々に与えられた運命や任務を誠実にこなしていきます。人に馬鹿にされることはあっても、他人を馬鹿にすることはありません。ベトナム戦争時代に命を救った上官に、退役後に悪態をつかれても忍んで受け入れ、戦士した親友の思いをいつまでも大事にし、そして、ただひたすら幼馴染のジェニーに思いを寄せます。その辺の主人公の性格の良さは、トム・ハンクスがうまく演じています。個人的にトム・ハンクスは大好きなので、彼が出ているだけで安心して見ていられます。

フォレスト・ガンプ自身の人生もそうなんですが、その時代背景に小ネタを差し込んで来る辺りが非常に滑稽で、家にプレスリーが来ていたり、大統領やジョン・レノンの映像とうまく合成していたり、ウォーターゲートホテルやアップルに関する描写などは思わず吹き出してしまいました。

この物語のメッセージでフォレスト・ガンプの座右の銘となっているものに、母親が愛するフォレストに言った言葉、「自分の運命は自分で決めるの。神様の贈り物を生かして。人生はチョコレートの箱みたい、食べるまで中身は分からない」と「バカをする者がバカ」というのがあります。

決して卑屈になることなく、神様に与えられた能力の中で懸命に生きるフォレストに感動します。それはきっと特别なものではなくて、私たちが幼い頃には当然のように持っていたものだろうと思います。

原題はフォレスト・ガンプ(Forrest Gump)のみとなっていますが、邦題では『一期一会』が付いています。おそらく先ほどの「人生はチョコレートの箱。食べるまで中身は分からない」と茶道の「一期一会」に通じるものがあると考えてのことかと思いますが、感覚としてはちょっと違うように思います。これは洋楽にしてもそうですが、洋画は特に邦題がおかしいというのはままあることなので、仕方ないのでしょう。見終わったあとに心地よい感動が残る秀作です。

コメント