【映画レビュー】DESTINY 鎌倉ものがたり

西岸良平原作の漫画を、同じ西岸良平作品を映画化した「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴が監督を務め、堺雅人、高畑充希の主演で2017年12月9日に公開された映画です。

あらすじ

鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和(堺雅人)のもとに嫁いだ年若い妻・亜紀子(高畑充希)はその生活に驚くばかり。道を歩けば、魔物や幽霊、妖怪や仏様、死神(安藤サクラ)までも現れるのだ。どうやらここ鎌倉は、人と人ならざるものたちが仲良く暮らす街らしい。

本業の小説執筆に加え、鎌倉署の捜査にも協力する夫・正和は、その上、鉄道模型収集やら熱帯魚飼育やら多趣味でもあり忙しい。そんな一色家には、実年齢130歳? の家政婦・キン(中村玉緒)、腐れ縁の編集担当・本田(堤真一)、果ては貧乏神(田中泯)が居座るなど個性豊かな面々が次々に現れ騒がしい日々。亜紀子の理想とはちょっと違うけれど、楽しい新婚生活が始まった。

しかし、正和には亜紀子に隠していた秘密があった。その秘密が原因で正和は結婚に疑問を感じて生きてきたようだ。正和はなぜ亜紀子を見初めたのだろうか?

ある日、病に倒れた正和が目を覚ますと、亜紀子の姿が消えていた。夫への愛にあふれた手紙を残して——。なんと亜紀子は不慮の事故で亡くなっており、黄泉の国(あの世)に旅立っていたのだった。失って初めて気づく妻・亜紀子への愛。正和は亜紀子の命を取り戻すため、一人黄泉の国へ向かう決意をする。そこで彼を待っていたのは、亜紀子を黄泉に連れさった魔物たちとあの人の姿……。

一色夫婦の命をかけた運命が、今動き出す。

ー DESTINY 鎌倉ものがたり – 映画・映像|東宝WEB SITE ー

映画レビュー

すでにテレビの地上波でも2度放映されているので、ご覧になった方も多いと思います。私はその時に見逃しているので、今回WOWOWのオンデマンドで見ました。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの原作者とスタッフによる作品ということで、キャストも「三丁目の夕日」でお馴染みのメンバーが何人か出ています。三丁目の夕日はノスタルジックな街並みを演出するのに、VFXが随所に盛り込まれていましたが、この「DESTINY 鎌倉ものがたり」は、空想ファンタジーな分だけ、特に黄泉の国に関してはほぼCGと言った感じです。と言っても、CGと実車を合成するVFXという点では、両者ともそれほどの違いはなかったのでしょう。

私は原作を読んだことはないのですが、原作の漫画はまだ連載中とのことですから、それを約2時間の映画に収めるのはきっと尺不足だったのでしょう。おそらくクライマックスの黄泉の国の部分は、その気になればもっと迫力のあるものに出来たようにも思います。

ただ、本来はVFX技術の凄さを見せるためではなくて、人間愛、特に今回の場合は夫婦愛を描くものにあるとしたら、その目的は達せられたのではないかと思います。

ここ最近、特に今年のGWは緊急事態宣言のもとで、鎌倉の人出がだいぶ増えたとニュースで伝えていましたが、関東地方に住む者にとって鎌倉という地は、神社仏閣の多い歴史の街という印象はあるかと思います。それと同時に江ノ島や湘南などの海も近いということもあって、若者に人気のちょっとオシャレな雰囲気も持っています。

映画に登場するように、幽霊や魔物が跳梁跋扈する世界とは到底思えませんが、そんな不思議な世界観を演出する街としては悪くないかと思います。主人公の作家の殺人事件の謎解きや堤真一が演じる編集者に纏わるくだりは、この物語を演出するのに必要だったのかと考えるとちょっと違う気もしますが、人間関係の繋がりとかを説明する時の前フリとして必要だったのでしょう。

以下、若干ネタバレも含みつつ、多少腑に落ちなかった点をあげます。ただ、原作を読んでいないので、その辺りは原作ではちゃんと説明されているのもあるかもしれませんが悪しからず。

黄泉の国は「千と千尋の神隠し」に出てくる街並みにちょっと似せたような中国的な印象を受けますし、想像力の戦いというのであれば、貧乏神の力を借りなくても、いかようにも戦い方があったようにも思います。

一番気になったのは、現世で主人公の妻が無くした身体に居付いていた人の魂。主人公が魂を取り返すことに成功すると、当然間借りしていたその人の魂は黄泉の国へ行かなければならないと思いますが、その時の家族の気持ちはどうなるだろうかとか、ちょっとその辺は気になるところでした。

VFXはさすがに良く出来ていたと思います。実際の鎌倉と比べるとかなり乖離していますが、このようなSFに抵抗の無い人なら、素直に楽しめるのではないかと思います。夫婦愛を確認したい方にお勧めする映画です。

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