【読書感想】ライオンのおやつ

小川糸さん著作、2020年(第17回)本屋大賞第二位の作品です。タイトルだけから想像すると、アフリカのサバンナの生存競争かなとか、あるいは動物園の飼育日記のようなものかなという印象を受けますが、内容はまったく違って、ここで言う「ライオン」というのはホスピスの名前になります。ですので、「ライオンのおやつ」というのは、そのホスピスで出されるおやつのことを指します。

 あらすじ

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。

ーポプラ社 公式サイトー

読書感想

あくまで個人的なことなのですが、ここ最近、「本屋大賞ノンフィクション本大賞」ノミネート作品の「エンド・オブ・ライフ」や、直木賞作品の「少年と犬」などを読んでいたせいか、人の終末期やその時に傍らに寄り添ってくれる犬のことなどを考えることが多くなっています。本書の中でも、癒やしという意味ではわりと犬の存在が大きかったりします。

冒頭にも書きましたが、この物語は「ライオン」というホスピス、日本では終末期医療を行う場所と認識されている方が多いと思いますが、そこを舞台にした話になります。ホスピス財団のホームページによると、

WHO(世界保健機構)は緩和ケアを次のように定義しています。(2002年)

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチである。」

となっています。若くして末期癌に冒されている主人公の雫は、その生い立ちや家族の問題から、終の棲家をそのホスピス「ライオン」にすることを決め、そこでの出来事が物語の中心となっています。

読んでいて思うのは、登場する人物がみんな良い人たちで、もちろんこれから死に行く人たち、それを見送る立場の人達ですから、大きな諍いがあるわけはありません。もっとも、自分の死に対して、それを素直に受け止められない葛藤を持つのは誰しも同じですが、どんなにその死を受け入れられない人でも、やがて身体が言うことをきかなくなり、その定めに従うほかなくなります。

人は生まれてきた以上は、いずれは誰もが死ぬ運命にあるわけですが、それを考えた時にその死を恐れてばかりではなく、今をどう生きるかということを常に考える必要があるのでしょう。そういえば、生活用品メーカーのライオン株式会社も今のキャッチコピーは、「今日を愛する。LION」でしたっけ。私が若かった頃は、「おはようからおやすみまで、暮らしをみつめる」が記憶に残っていますが、それはどうでもいいですね。

この物語はフィクションですので、ホスピスが実在するわけではありません。しまなみ海道にあるレモン島は、一般的には日本レモンの発祥の地である、「生口島」を指すようですが、この物語のモデルとなった島は、そのお隣の「大三島(おおみしま)」のようですね。周りをいくつもの島で囲まれていますから、気候や海はさぞかし穏やかなのでしょう。

物語に流れる空気はまさにそんな島の雰囲気を醸し出しているように、静かで穏やかです。思わず涙してしまいそうな非常に感動的な物語ですが、そんな設定がちょっとずるいかなという気もします。これが本屋大賞をとってもおかしくなかったなと思わせる感動作でした。

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