【読書感想】むかしむかしあるところに、死体がありました。

青柳碧人さん著作の2020年本屋大賞第10位の作品です。タイトルからわかるように、昔話をモチーフにして、それに殺人事件を脚色した構成になっています。誰でも知っている昔話のパロディ的作品ですから、読むのに特に苦労はありません。ただ、昔話の殆どの締めが「めでたしめでたし」で終わるところを、わざわざ殺人事件を絡めているわけですから、少なくとも愉快な展開ではありません。

あらすじ

昔ばなし、な・の・に、新しい!鬼退治。桃太郎って……え、そうなの?大きくなあれ。一寸法師が……ヤバすぎる!ここ掘れワンワン。埋まっているのは……ええ!?
「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった皆さんご存じの《日本昔ばなし》を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ!「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」の全5編収録。

ー 双葉社HPより ー

感想

元々がフィクションの昔話を、あえて殺人事件にアレンジしているわけですから、それぞれの昔話に思い入れのある人にとっては、あまり愉快な内容ではないかもしれません。本書の内容は特に推理力を働かせて読むというよりは、作者が想像した殺人事件を、テレビドラマの映像を見るように読んでいったほうが面白いでしょう。

昔話の多くが子供の情操教育のためであったり、倫理観を養うためのものであることが多いことを考えれば、それと殺人事件を結びつけることはある意味タブーなのかもしれません。

さらに昔話を現代風にアレンジしづらい、ましてや殺人事件のような推理小説に取り込むのが難しい理由は、話の登場人物が非常に少ないことも上げられるでしょう。ですので、本書においても殺人事件に絡む人たちは、本来の昔話には登場してないことも多く、特に人格や人となりについては作者が考えたフィクションになっています。

正直読み終えて何か残るかと聞かれたら、これと言って感銘を受けるわけでもないですし、逆に不愉快になるわけでもないので、ライトノベルとしてなら、これはこれでありなのだろうと思います。ただ、先程も書いたように登場人物の多くが著者によって創作されたものであるため、特に最後の話では鬼の名前に必ず鬼が付いているため判別が若干難しく、というか覚えるのが正直面倒くさく、ある意味どうでもいいやと思ってしまう部分もあるのが多少残念な気がします。

肩肘張らずに気楽に読みたい場合には良い本ではないかと思いました。

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