【読書感想】逆ソクラテス

2021年本屋大賞第4位、第33回柴田錬三郎賞受賞作の伊坂幸太郎さん著作の小説です。全部で五話の短編連作です。伊坂幸太郎さんは、第5回(2008年)『ゴールデンスランバー』で本屋大賞を受賞しています。

内容紹介

敵は、先入観。世界をひっくり返せ!
伊坂幸太郎史上、最高の読後感。
デビュー20年目の真っ向勝負!
無上の短編5編(書き下ろし3編を含む)を収録。

収録作
「逆ソクラテス」
「スロウではない」
「非オプティマス」
「アンスポーツマンライク」
「逆ワシントン」

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読書感想

短編集で、収録作のうち最初の2篇は既発表のもの。残りの3篇が書き下ろしになりますが、以前の作品に微妙にリンクしている部分もあります。

時代背景というか年代設定が小学校時代という、テーマとしてはやや難しい世代ではないかと思いますが、中学高校時代のほろずっぱい青春時代とはまた違った、まだ世間や社会のことをよく知らないときのことをうまく描いていると思います。

個人的には、おそらくは同じ男性だからからか、比較的理屈っぽいところなども読みやすく、また共感、共鳴できる部分も多くあり、非常に読みやすかったです。

小学校時代の人間形成に多くの影響を及ぼす親や教師との関わりの中で、子供なりに悩み、そして考え成長していく物語で、それぞれの編が示唆に富んでいて、読後感も素晴らしいものがあります。登場人物が子供のくせにやけに大人びていたり、先生たちがやたらと好人物で素晴らしい人たちというのは、今の時代に逆にリアルリティに欠ける気がしなくもありませんが、こうあってほしいと願う世界がここにあります。

作者自身も、作家人生20年の集大成と銘打っているように、非常に内容的にも素晴らしい是非読んで欲しい佳作でした。

2021年本屋大賞についての感想

本書読了で2021年本屋大賞及びノミネート作品を読破したことになりますので、最後に私なりの感想を述べたいと思います。今年度の作品はエンターテインメントとしても文学作品としても総じてレベルが高く、読了後に満足感の高い作品が多かったように思います。その中でも大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』と2位との点差は納得出来るものでした。個人的には、私は伊吹 有喜さんの柔らかい空気感が好きなので2位と3位は逆になりますが、きっと読者それぞれで順位が入れ替わったりするのでしょう。

昨年度の本屋大賞は1~3位、4~6位、7~10位の3グループで、そのグループの中での順番が入れ替わったとしても、さほど違和感はないかなと思いましたが、今年の1位は不動でしょうね。私が本屋大賞に興味を持つきっかけになったのが、2018年(第15回)の本屋大賞を受賞した、辻村深月さん著作の『かがみの孤城』なんですが、その年は2位の作品に大差をつけての圧勝でした。

近年はそれほどの点差になることはあまり無いように思いますが、それは全体的にレベルが向上しているからと言えるのでしょう。ライバルが増えるとその分だけ作家の方たちは大変でしょうが、逆に読者には喜ばしいことだろうと思います。これからも質の高い小説や物語を数多く世に送り出して欲しいと願っております。

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