【読書感想】放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件

2024年本屋大賞ノミネート、知念実希人さん著の子供向け推理小説です。著者の知念実希人さんは本屋大賞の常連作家さんであるとともに、お医者さんでもあります。私がこの本屋大賞の感想を書き始めてからも、2020年に「ムゲンのi」、2022年には「硝子の塔の殺人」で本屋大賞にノミネートされています。それ以前にも2度ほど本屋大賞にノミネートされています。今年の本屋大賞はまだ発表されていませんが、過去4回とも順位が8位でしたので、今年の順位もまた楽しみですね。

あらすじ

夜の学校。プールに放たれた金魚。だれが、なんのために?
4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」が先生の依頼で動き出す!
「ぼくは読者に挑戦する」
名探偵・辻堂天馬の挑戦に、キミはこたえられるかーー?

ー 放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 | ライツ社 ー

読書感想

本書は作者の知念実希人さんが、読書の楽しさを子どもたちに知ってほしいと思って書いた作品です。シリーズ物でこれが最初の1になっていますが、これを書いている2024年の3月現在、第3巻まで刊行されています。

本格推理小説ですが、殺人などのような凄惨な事件ではありません。全文ふりがながふってあるので、小さいお子さんと一緒に読むのにもいいと思います。作者の知念実希人さんによると大人のミステリ小説とまったく同じ手法で書かれたということですが、さすがに大人の小説のように事件の背景が複雑だと子供には理解するのが大変ですし、登場人物が多いとそれだけ話が煩雑になってしまいます。しかし、この小説は子供向けということもあり、事件の概要も登場人物もだいぶ少なめになっています。それゆえ犯人には辿り着きやすいんですが、背景描写が少ない分、その動機を推理するのが難しくなっています。

いわば江戸川乱歩の明智小五郎シリーズ、あるいは今の子供達でしたら名探偵コナンの少年探偵団のような感じですので、アニメでなくとも親しみやすいでしょう。

文字が大きくて、話も短いですから、大人が読めば小一時間もあれば読了してしまいます。もともと子供向けですので、ぜひ名探偵になって子供さんと一緒に推理しながら読んでもらいたいと思います。

昨今、街の本屋さんが激減しているというニュースが報道されていますが、この傾向はこれからますます顕著になるでしょう。紙の本がデジタルになっていくのは時代の趨勢で仕方ないかとも思いますが、紙製の本には匂いだったり、重さだったり、デジタル本とはまったく違った良さがあると私は思います。何よりも本を読むということは知的好奇心を満たしたり、これまで見たことがないようなさまざまな発見があり、もちろん情操教育にも役立つと思います。本人にとっては純粋に本を読む楽しさを知ることも出来るでしょう。

また、本屋大賞が書店員さんが広く人に勧めたい本であるということは、その中には当然これからの日本を背負って立つ若者や子どもたちも含まれています。きっとそういう人たちを育てるという目的もあっての本屋大賞ノミネートであり、また書店員さんたちがより多くの子どもたちに本に触れて欲しいとの思いが籠もっているのでしょう。それも含めて、本屋大賞ノミネートは意義のあるものだと思います。

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