近頃またAmazon プライム会員に登録しました。その中から今回はスティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演の「ターミナル」を見ての感想です。Amazonプライムの良いところは過去の映画などを無料でたくさん見られるところです。さすがに新作映画などはありませんけれども、それでも名画ですとか、あるいは過去に話題になった映画などもろもろのものが無料で視聴できるというのは非常に良いことではないかなと思います。
今回見た、「ターミナル」は2004年に公開された映画です。少し古い映画になりますが、私自身の備忘録も兼ねているのでご容赦願いたいと存じます。マドンナ役と言いますか恋人役に、ラックスのCMでも有名になりました、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが出演しています。なお、内容はネタバレを含みますので、まだご覧になっていない方は以下の内容は読まないほうが良いかもしれません。
あらすじ
出国後に内戦が勃発して無政府状態になってしまった国(クラコウジア)から、アメリカのジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った主人公(ビクター・ナボルスキー)。パスポートもビザも無効になり、アメリカに入国が許されず、また内戦状態のために母国に帰ることも出来ずに国際線のターミナルに取り残される羽目に陥ります。そこで巻き起こす騒動や恋愛模様などが面白おかしく、時には悲しく描かれていますが、ビクターがアメリカに来たのにはある目的がありました。
以下、内容について
クーデターによる政情不安なのでそれがいつ解消されるかというのは全く闇の中なんですが、この時の国境警備局主任(フランク・ディクソン)は問題が解決するまでとりあえずそのままターミナルに残るようにとビクターに伝え、食事券やテレフォンカードあるいは呼び出し用のポケットベルや、呼び出された時に職員用のオフィスに入るためのパスなどを渡して一旦その場をしのぎます。とはいえ、もともと厄介払いしたい相手ですから、待っていろというのはいわば決まり文句のようなもので、言った本人もそれを守るとは思っていません。本音は勝手に空港から出ていって欲しいと思っていたのでした。
ところが、真面目なビクターは待っていろという言葉を額面通りに受け取り、なかなか自分から外に出ようとしません。業を煮やしたディクソンは、一計を案じて空港の警備員の目を離した隙に空港から出られるというヒントをビクターに教えたり、移民局の庇護を求めることが出来ると入れ知恵したりするのですが、慣れない英語で理解も難しいためビクターはそれを汲み取ることが出来ず、結局そのまま空港にとどまることになります。やがてディクソンとは感情的にも対立するようになってしまうわけですが、そのへんの描写はわりとユーモラスに描かれています。
彼の仲間になった機内食のサービス係エンリケ・クルズという若者が、入国審査官の女性(ドロレス・トーレス)に恋をするくだりがありました。それまで荷物カートのデポジット返却金で飢えを凌いでいたビクターでしたが、ディクソンの嫌がらせによってその小遣い稼ぎの手段を絶たれ、食事に困っていました。エンリケの作戦は、そんなビクターに機内食をサービスする代わりに、ドロレスの弱点(好みや情報)を聞き出してもらおうというものでした。その条件を飲んだビクターは恋のキューピッド役になり、ドロレスから色々と情報を得ます。その一つが、彼女は「大会」に興味があるということでした。それを聞いたエンリケは話の流れからドロレスが「トレッキー」だということを理解します。
字幕版で見ていて実はこの時「トレッキー」というのが何なのかわからなかったのですが、吹替版だと「大会」は「集い」、「トレッキー」は「スタートレックだ」となっていますので、日本人ならその方がわかりやすいでしょうね。その昔、日本テレビで「アメリカ横断ウルトラクイズ」というクイズ番組がありましたが、そのテーマ曲に使われていたのがスタートレックのテーマでした。しかし、多くの日本人はその曲を聞いてもむしろクイズ番組を思い出すでしょうから、スター・トレックが日本でどの程度の人気だったのかは推して知るべしです。なので、実はドロレスがエンリケのプロポーズを受け入れた時に、彼から贈られた指輪を嵌めているところを見せるシーンも、トレッキーなら誰でも知っている無表情でバルカンサリュートをしていたという小ネタも、スター・トレックを知らない人には意味不明でしょう。私もそのシーンに何かしら意味があるのだろうとは思いましたが、調べてみるまでわかりませんでした。
もうひとつ、ここも大事なネタバレになってしまいますが、ビクターが持っていたピーナツ缶、これは冒頭からクローズアップされていて、中に何が入っているのかがひとつの謎だったのですが、その中にはA Great Day in Harlem(Harlem 1958 )と言われるジャズミュージシャン達の写真と、父親が愛してやまないそのメンバーのサインが入っていました。ただ、その写真に写っている中のひとり、伝説的サックス奏者ベニー・ゴルソンのサインだけがありませんでした。ビクターは必ず彼のサインをもらってその缶に入れると父親と約束したため、その目的を完遂するまで空港で待っていたのでした。ベニー・ゴルソンは映画の終盤でカメオ出演していますが、最終的にビクターは無事にサインをもらい、ようやく家に帰ることができます。
この辺も理解しづらい部分で、ジャズやその奏者に対するリスペクトが理解出来ないと、どうしてそこまでして目的を成し遂げる必要があるのかという部分が釈然としません。背景としてはアメリカ人以上にヨーロッパの人の方がジャズを好むというのもあるでしょうし、黒人音楽という意味では「開放」を象徴しているとも言えるのでしょう。
ビクターがターミナルの人気者となって、いよいよ空港脱出の時に空港職員やショップ店員などが総出でお見送りする場面などはいかにも映画的な演出で多少大げさではありますが、そこは娯楽映画ということで大目に見るべきなのでしょう。総じて心が暖まる佳作だと思います。
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