これはGyaOの 日本アカデミー賞」過去受賞作品、関連作品からの鑑賞です。2003年の第26回日本アカデミー賞優秀作品賞に選べれた映画です。ちなみに、この年の最優秀作品賞は、真田広之主演の「たそがれ清兵衛」になっています。
本作は連合赤軍による有名な人質籠城事件ですが、ある程度年齢を重ねられた方なら記憶にあることでしょう。私は当時まだ小学校の低学年だったため、リアルタイムでの記憶は殆ど残っていませんが、後のニュース映像などで警察の放水や鉄球を使った山荘破壊作戦、当時任務についていた機動隊や警察官がカップヌードルを食べていた姿などが印象に残っています。
作品そのものについては、原作者の佐々淳行が事件当時の現場指揮官だったこともあり、比較的忠実に描かれているように思います。佐々淳行は劇中でも映画館の観客として登場しています。ただ、この映画の難しいところは、原作者の佐々淳行、もしくは主演の役所広司の視点で描かれているので、この事件そのものを知らない人にとっては、いったい何をやっているのかわからないだろうと思うところです。
通常こうした事件物を扱うときは、犯人の心理描写や事件が起きるまでの動機なり、概要なりを説明するものですが、前提としてあさま山荘事件を知っている人に向けた真相暴露的なところがあるので、犯人たちの心の葛藤などは一切なく、というよりも犯人の登場シーンもほとんど無く、あくまで警察内部のドタバタ劇になってしまっています。それはそれで犯人や人質の状態がわからない不安や焦燥というものをうまく表現できていたのだろうとは思いますが、事件の背景や予備知識の無い若い人たちは置いてけぼりになってしまうのではないでしょうか。それと登場人物がほとんど男性なので、電話交換手の女性を多少オーバーアクション気味に登場させたりしていますが、事件の緊迫感を出すためには、正直これは必要なかったのではないかと思います。
警視庁と長野県警の縄張り争い。警視庁の中でもメンツの争いなど、およそ事件解決にはどうでもよい内容が展開されていますが、組織というのは得てしてそういうもので、事件解決までに時間がかかったのは描かれているように組織統制が出来ていなかったからなのだというのは納得できるところです。
事件の起きたのが2月の後半、弁当も凍る軽井沢の雪深い山間の事件ということで、当時極限状態の中で現場を包囲していた機動隊や警察官の人たちはさぞかし大変だっただろうと思います。一方、多くの市民がテレビの生中継によってお茶の間で事件を知り、遅々として進まない進捗状況に苛立っていただろうことも容易に想像できます。
実際に犠牲者や負傷者も大勢出ているので、見終わった後の爽快感などはあまり望めませんが、緊張感を味わうには良い作品かと思います。
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