【読書感想】そして、バトンは渡された

2019年本屋大賞受賞、瀬尾まいこさん著作の小説です。この年の本屋大賞では、2位以下に大差をつけての大賞受賞ですので、内容の面白さは折り紙付きです。

あらすじ

高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮を名乗っている。
名付けた人物は近くにいないから、どういう思いでつけられた名前かはわからない。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。

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読書感想

いわゆるライトノベル的な感じで、文体もストーリーも非常に読みやすい物語です。話の展開が面白いと言うよりは、登場人物のユーモラスな印象が、この作品の特徴でしょう。出てくる人たちはいい人たちばかりなので、逆に主人公がどうしてそこまで愛されるのか多少疑問に思うこともありますが、等身大の女子高生ということで、共感出来る方も多いでしょう。続きが気になってしょうがないというほど波乱に満ちていたり、奇想天外な内容ではないんですが、世界観というか空気感が穏やかで、気持ちの良いお風呂に浸かっているような印象です。きっと読み始めたら、誰もがあっという間に読み終えてしまうでしょう。

主人公の優子はあらすじにもあるように、何人もの親に育てられます。現実問題として、血の繋がっていない赤の他人の子供を、この小説のように大事に育てることは難しいのではないかと思います。ただ、その一方で、親子の関係というのは単に血の繋がりだけなのだろうかという疑問にもぶつかります。むしろ親としての自覚を持ち、子供の将来に対して責任を持ち、一緒になって模索できる人だけが、本当の親になれる資格があるのでしょう。その姿は献身的でやはり美しいものがあります。

読了感も爽やかで優しい気持ちになれる物語です。実に本屋大賞らしい心温まる秀作でした。

そして、バトンは渡された
瀬尾 まいこ 文藝春秋 2018年02月22日頃
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