【読書感想】ノースライト

2020年本屋大賞第4位、横山秀夫さん作の小説です。こちらは本屋大賞以外にも、「週刊文春ミステリーベスト10 2019」国内部門で第1位、「このミステリーがすごい!2020年版」国内編でも、「 medium 霊媒探偵城塚翡翠」に続いて2位になっています。著者の横山秀夫さんは、これまでにも数多くのミステリー小説を発表していますが、そのいくつかが映画化、ドラマ化されています。

あらすじ

一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは?

ー新潮社 公式サイトー

読書感想

わりと小さい文字で400ページ以上あるので、かなりの大作です。ノースライトというのは建物の北側から入る柔らかな光のことです。この小説の核になる部分でもありますが、おそらくはそのイメージによって、この物語全体の雰囲気が形作られているように思います。

有名建築家のタウトや実在する建物なども出てくるために、あたかもテレビの2時間ドラマを見ているような気分にもなりますが、それだけ映像として視覚に訴える内容でもあるのでしょう。言葉の魔術とでもいいましょうか、この情景をこのように表現できるのだなと、プロの作家の語彙力やその視点に思わず唸らされます。ありがたいことに、最近はネットで検索すれば大抵の場所は画像や映像で見ることが出来るので、自分の乏しい想像力では足りない部分を補うことが出来ます。きっとこの小説に触発されて、登場する場所や建物に赴いた方もいることでしょう。

あらすじにあるように、一級建築士が設計した家に、住んでいるはずの家族の姿が見えないことから物語が始まります。本来いるべきはずの人がいない、あるいは、何故そこにあるのかわからない物があるというだけで、これだけ気になってしまう、話に引き込まれるものなのだなというのがよくわかりました。

元新聞記者らしい多彩な表現による情景描写、おそらく相当研究したであろう建築関係の話など、大人の小説になっていると思います。私の拙い文章力では表し切れないほど、非常に満足感の得られる素晴らしい読後感でした。

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