「東京DEEP案内」というサイトから生まれた書籍で、それにしても分厚い本です。その分情報量も豊富で、首都圏、特に東京を中心としたダークサイドな一面を、舌鋒鋭くと言いましょうか、あるいは鋭い観察眼でと申しましょうか、ネット用語的にはとにかくディスりまくっています。そんなところから評価は賛否分かれるところだと思いますが、あまりアングラ的な知識の無い方には面白いかも知れません。
東京23区を東西に分けると、総じて西の方が上流、お上品、富裕、オシャレであり、対して東の方は、中流から下流、お下品、貧困、野暮と言った印象が強いかと思います。それはおそらくイメージだけではなく、実際にそういう面があるからでしょう。この本に書かれている住みたくない街というのは、環境的に住みやすいか、住心地が良いか、危険は無いかと言った、日常生活を送る上で非常に気になるところをある意味的確に表現しているので、ある方にとっては非常に有用な、またある人にとっては非常に不愉快な一面を持っています。
そういう意味では、取り上げられている地域にお住まいの方は、ある程度の忍耐力が要求されるかと思います。しかし一方で、あの伝説の漫画、「翔んで埼玉」が映画化されることからもわかるように、いじられることに無常の喜びを感じる人種の方もいるわけでして、そういう方からすると、なかなかどうして面白いじゃないかということになります。実は私自身も本書で取り上げられている地域に長年住んでいたり、仕事の関係でよく行ったりと色々関係している部分もあり、読みながら確かにそうだと思ったり、その一方で本書で取り上げられているほど酷くないなと思ったりもしましたが、特に悲愴感に打ちひしがれることもなく、わりと納得しながら読むことが出来ました。
住みやすいか住みにくいかというのは、個人の家庭環境や懐具合、趣味趣向や生活時間、諸々の要因が重なって人それぞれ千差万別の違いがあるわけですが、例えば酔っ払いや夜中に騒ぎそうな人が多そうな地域とか、ゴミ屋敷になりそうな地域とか、そういった括りで見ることは出来そうです。そんな観点から、本書では過去に起きた犯罪や暴力団の事務所があるとか、オウム真理教の施設や最近特に関係が悪化しているお隣の国の人が多い地域とか、子供の教育に悪い風俗店や飲み屋についてですとか、ドヤ街やバラックなどについても取り上げられています。どちらも歴史的な面や文化的な側面で貴重な資料のような気がしますが、歴史という観点では、それほど深く掘り下げられているわけではありません。その辺が浅薄な印象を与える部分はありますが、そんなところや多少の誤記に関しては目を瞑って、寛大な心で読み飛ばすには面白い本ではないかと思います。
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